「パパ、駄目だよ。表に出る仕事なんだから顔に吹き出物とか作ったら」
次男が二段ベッドの上から顔だけを出して、鏡の前で吹き出物を気にしているわたくしをジッと見ながら言った。
「大丈夫だよ、最近はメイクさんが上手だから綺麗に隠してくれるから」
と、返すと
「駄目でしょ。メイクに頼ったら、キチンと元から綺麗にしないと。体の自然治癒力があるんだし」
と。
返す言葉がございませんでした。
最近どちらが親がよく分からなくなる事が多い。
先日も、夕飯の買い物を長男に頼まれた時、忘れないように、と、キチンとメモを書いて渡された。
「子どもじゃぁ無いんだからやめてくれよ」と、わたくしは笑って言い放ったのだけれども、買い物に行ったのに、一番買ってこなくてはいけないものを見事に忘れた。
その時の息子達の、ホラやっぱ忘れた、とわたくしに対する呆れた顔は忘れられない。
日に日に父親の威厳は無くなってきている。いや、もしかしたら元々そんなものは無いかもしれないけれど、それもまんざら悪く無いかもなぁ、とも思う。
息子達に心配されるには少し早すぎる気はするけど。
まぁ、駅に自転車を置いて来たのを忘れて、「自転車が無い、盗まれた!」と慌てふためくような父親なら仕方ないか。