私は40年近く俳優の様な仕事をしてきた。
「様な」というのは、バラエティーやらラーメン屋さんやら迷走してるかのごとく色々な事をやってきたのでその様な言い方になってしまった。地味過ぎて信じてもらえないかもしれないが今も俳優だけで生きてこれている。
そんな私がまた俳優とは関係無さそうな事をやろうとしている。
第二種電気工事士の資格を取ろうとしているのだ。
資格を簡単に説明すると、一般家庭や小規模な店舗など電気工事を行える国家資格で、DIYで自宅のコンセントを増設したい人からも人気の資格だ。
何故その資格を取得しようとおもったのか。
転職ではない。少し長くなるが聞いてほしい。
きっかけは、少し前に大雨で自宅が浸水した時だった。
その大雨は、近くのスーパーや店舗が浸水でしばらく営業できなくなるぐらいの大雨だった。見た事ない雨量で家の近くの道はひどい所では膝下ぐらいまで水が溜まっていたと思う。
そして停電した。地域一帯の停電だったと思うが、しばらくしても自分の家だけ電気がつかなかった。
私は慌てて電力会社に連絡した。
連絡したら「原因は調査しますが、修理は電気屋さんに頼んでください」といわれたが電力会社に頼んだ。
調査結果は「漏電」で細かい場所までは特定できないとの事で、電力会社オススメの電気屋さんが書かれた紙をもらった。
浸水していて漏電?もしかして感電とか火災と可能性ある?
私は更に慌てて電気工事屋さんに電話をかけたが、同じ様な人が多かったのか、すぐに来てくれる所はなく、だいたい早くて一週間後だと言われた。
一週間?1week?
私はうろたえた。とりあえず腹が減っては何もできないと思って自転車を走らせ買い物にでた。普段なら絶対買わないであろう500円近くするオニギリを何故か二つほど買い、停電の家にもどって食べた。食べながら
電気が一週間使えないかもしれないだけで何故にこんなに不安になるんだ、50歳にもなる大人が電気使えなくなっただけでオロオロして、自分の家なのに何も出来ないとはなんて無能で情け無いんだ。とはいえ困る。ご飯は外食で行けるかもしれないがエアコン無しで寝るのは辛いし、夜は懐中電灯で生活しないといけないし、携帯の充電は自転車を走らせて漫画喫茶まで行かないと行けなさそうだ。洗濯はコインランドリーか。冷蔵庫の中身はどうなる?冷凍庫にあるガリガリ君はドロドロになってしまうから処分しなければいけない。浸水した部屋の掃除なんてもう考えたくない。
そんな事を思っていたら携帯に着信があった。
先程何件か電話した電気屋さんの一つだった。
「現場が一つ早く終わりまして今からすぐなら、修理に伺えますがいかがしましょう」との事だった。
私はすぐにお願いした。料金の説明を丁寧にしてくれていたが聞いていなかったと思う。来ていただけるなら何でもしますぐらいの気持ちだったと思う。
電気屋さんが到着すると、色々な機械を出して調査して漏電の原因をすぐに探し当て10分程で作業を終えた。
たまたま漏電の修理が簡単なモノだったのかも知れないが、とにかく早かった。そして料金もそれほどかからなかった。
私は一安心しておにぎりの残りを食べながら思った。
自分の家の電気工事ぐらいできるようになりたい。そして、これからはこういうスキルが必要な時代が間違いなく来る。
と。
そして電気工事士の資格を調べたら、私には必要だと思う事が沢山あった。
程よい田舎に小さな家を持ちDIYをやりたいと思っているし、母が持っていた古い賃貸物件も管理しているし、自宅のコンセントの位置や照明をかえたいと思っている。かなり私とマッチング度は高い。
もう両思いでいいんじゃないか。
という事ですぐに試験を申し込んだ。
受験料11100円。
その他、技能試験用の工具や練習用部材セット、合格後の免状交付申請手数料などがかかるため取得までの総費用は約5万円以上かかるようだ。
学科の試験日まであまり時間がなかったが、記憶力なら自信があるし比較的に簡単な資格とインターネットに書いてあったから筆記問題はいけるだろうと思った。
私は参考書や過去問題集を買いYouTubeを見て毎日勉強した。
落ちた。
ギリギリいけるんじゃないかと思ったが、結果は1点足りなくて落ちた。
よくよく考えたら記憶力は良いが頭が悪い事を忘れていた。ひっかけ問題に全部引っかかっていたかもしれない。
というより、基礎もわからず理解をせずにただ覚えていた事が多かったと思う。
そんな付け焼き刃で覚えて受かった資格持っていても事故が起きてしまうだろうから、落ちて良かった。落ちてよかったんだ。
と、言う事で今度はしっかりゆっくりじっくり勉強に取り組んでいる。
今年の実技の試験日はちょうど舞台の公演が入っているので、おそらく取得するのは来年になるだろう。
取得したら実務経験が欲しいが、それはまた後で考えるとする。
とりあえず学科試験だけ今年にとっておくか悩んでる。
終わり