長男が高校三年の時の三者面談でいきなり「俳優になりたいです」と言った。
あの時はさすがにたまげた。
わたくしはコントのように二度見して目を見開いた。
長男が小学生低学年の頃、わたくしが女の人の顔に青酸カリを滴しながらニヤニヤしながら殺そうとしている役をたまたまテレビでオンエアしているのを長男が見てしまった事がある。
仕事から帰って来たわたくしとテレビをまじまじと見比べた後、「ギャーァァアア!!」と叫びながら部屋の隅で布団にくるまって大泣きして、わたくしが「これはお仕事なんだよ」と言ったら父さんの仕事は変態ヒットマンと思ってしまったのか更に「ギィィヤァアア!!」と泣き叫びガタガタ震えて、あの時はもう収拾がつかないぐらい大変な事になった。
これがトラウマでわたくしのお仕事をその後長男が見る事はなかったので、俳優になりたいと言い出すことは間違ってもないだろうと思っていたのだからそりゃビックリだった。
おまけに長男は石橋を叩いて壊してしまうぐらいの慎重なところもあるので、食べていけるまで何年かかるかわからない、それどころか芽がでるかもわからない仕事を選ぶなんて、どこでどのように思ったのか謎だし。
「ダメだ、この仕事はそう簡単にやろうと思ってやれるもんじゃない、もっと安定した仕事を探せ」と、言ってもこんなフワフワ生きている父さんに言われても説得力ないだろうから口も手も出さず見守っている今日この頃なんですが、最近ほんの少しずつですがお仕事をしているようです。
わたくしが俳優のお仕事のみで食べて行けるのに十年近くかかったけど、長男は何年かかるかなぁ。
来年お酒を飲める年になるから、一緒に飲みに行って語り合いたいわ。
ちなみに次男は小さい頃から父親が犯人など悪役のお仕事を見ても驚きません。
「水戸黄門に悪代官がいるように、ポケモンにロケット団がいるように、悪役がいなければ正義は成り立たないし、悪役が悪ければ悪いほど物語は面白くなるから、悪役はとっても大切なんだよ」と話した事が効いているからですかねぇ、謎です。
少し前の仕事前の家族の会話。
長男「今日、帰りは遅いの?」
父さん「今日は夜に殺しがあるから時間かかるかなぁ」
次男「今日はどうやって殺すの?」
父さん「銃で殺すよ』
長男「じゃあ、時間かかりそうだね」
次男「頑張ってね」
不思議な家族です。